2021-02-24

コーチになるためにコーチングを学ぶのだろうか?

コーチングを学んだのは、もうずいぶんと前のことになりますが、今でもその時の違和感を振り返ることがあります。

最近、久しぶりにコーチングの書籍を手にすることがあって、その本を読みながら思い出したことを綴ってみたいと思います。


コーチングを学び始めたのは、指示命令で動かす組織のあり方の限界を感じていたから。

言われたことを言われた通りにするのも、させるのも、何か違う感じがしていたからです。


それで、本人の中のやる気を引き出して、主体的・自発的に動けるような上司部下の関係づくりができればと思って、コーチングに関心を持ちました。


学んでいくと、確かに納得できることばかりで、確かにこういう関わり方をしていくと、本人の中にあるものを引き出して、自らの意志で動き出すようになるかもしれない、と期待が膨らんだものです。


ですが、その後にコーチングの実態に触れていくと、少しずつ「何か違う」と感じることが多くなってきました。

企業の依頼を受けたビジネス・コーチと呼ばれる方々と、定期的なコーチング面談を受けた社員とお話しをしてみると、言葉尻を捉えてやることを詰められるような感覚を持っておられる印象を持ちました。


仕事として企業から報酬をもらっておられるビジネスコーチの立場からすると、担当した社員が何らかの目標を達成したという実績が必要なのかもしれません。

しかし、これではコーチング・マインドから大きく外れてしまいます。

当時、私の周りの友人たちの中にも、所属組織のビジネスコーチングの印象は芳しいものではありませんでした。そして「コーチングは嫌だ!」と語る方も少なくありませんでした。

すべてのビジネスコーチがそうだというわけではありません。素晴らしい方もたくさんおられます。

しかし、依頼主からの要望は断りにくいでしょうから、リクエストに応えるために、悩みながらも試行錯誤されて、コーチングマインドから外れたアプローチにならざるを得ないことに苦しんだコーチの方も少なくないのかもしれません。


ホントは依頼側との間でコーチングの精神を共有し、プロセスへの理解を得て取り組むことができればいいのでしょうが、言うほど簡単なことではなさそうです。

依頼する企業側からすれば、業績・成果アップのために、自分たちができないことをおカネを出して外注するわけですから、プロセスよりも結果の方が重要なわけです。

なかなか、プロセス理解に時間を掛けようというドライブはかからないのかもしれません。


受注するコーチ側よりも発注する企業側の方が立場的に強いため、恐らくこうしたボタンの掛け違いが生まれ、その結果その歪みはコーチングを受ける社員の方の葛藤という形で現れてきたのかもしれませんね。


さて、もう一つの違和感についても言及しておきたいと思います。

コーチングを学ぶことを続けようとすると、コーチになるためのレール(講座)が用意されていることが多く、これも違和感を覚えたことの一つです。

確かにコーチングの考え方は素晴らしいと思いましたが、私は、コーチになりたくてコーチングを学ぶわけではなかったからかもしれません。
より良い上司部下の関係、チームのあり方を求めて、コーチングが役に立ちそうだと思って学びの取り組みを始めても、コーチになり、更にはコーチングを教える立場になるためのステップが高額のコースとして用意されていることが多くありました。


これは、コーチングに限ったことではないのですが、学びの先に用意されたものが資格取得だったりすることは少なくありません。もちろん、コーチになって、それをご自身のビジネスとして取り組んでいきたいとお考えの方がいらっしゃるのは承知しています。

ですが、多くの方にとって、体調が悪いから病院に行くのは、治したいからであって、医師になりたいからではないのです。頸肩が凝って辛い時に、整体師にマッサージしてもらうのは、整体師になりたいからではないのです。

コーチングを学ぶのは、コーチになりたい人ばかりではないのですが、コーチを目指す人以外への現場実践のサポートはとても脆弱な印象を持っていました。

サービスを提供する側のビジネスモデルとしては理解でないこともありませんが、学ぶ側のニーズがおざなりになっているような気がしていました。


あくまで、当時の私の個人的な体験からの考えですので、そうでない状況もあるのかもしれません。

また、こういう経験を踏まえたお陰で、私自身は組織全体を俯瞰して関わる組織開発というアプローチに関心を持つようになっていったので、悪い経験だったわけではありません。

むしろ、コーチングの考え方や手法を学んだことはとてもプラスに働いていることを付け加えておきます。

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